-第2話-
カイとサオは密漁船を襲撃したトビウオ型ゲカアウタレスと交戦し、これを駆除した。しかし高圧ガスを体内に持つトビウオ型は絶命する際に大爆発を起こし、このアウタレスの危険性をその場の者達に示した。密漁船は拿捕され、全乗組員は湾岸警備隊に逮捕された。今事件はニュースで取り上げられ、大きな話題を呼んだ。アウタレスの脅威、保護対象であるトビウオ型の殺害に対する抗議など、民衆の注目を再び集めていた。保護対象のトビウオ型を駆除したカイとサオは活動制限を通告され、政府や海軍に参考人として呼び出された。二人を責める者もいれば、二人の迅速な対応を評価する者もいた。ある日カイとサオは再び政府に呼び出され、応接室に案内された。度重なる呼び出しにカイは苛立ちを募らせていたが、サオはカイの横でじっと黙り込んでいた。すると二人が待つ応接室に一人の若手議員が入ってきた。彼女はトビウオ型の調査のため、カイとサオに協力を求めてきた。この若手議員は情報が少ないトビウオ型に強い危機感を持ち、独自に動き出していた。彼女によると、海軍の連絡で先日の凶暴なトビウオ型ゲカアウタレスはまだ複数生息している可能性が高いとの事だった。更に海域の汚染が以前よりも悪化しており、原因は不明だった。若手議員はトビウオ型と直接対峙したカイとサオを引き込むため、二人の処遇に便宜を図った。こうしてカイとサオの処分は見送られ、二人はアドバイザーとして若手議員に協力することとなった。
-第2話~トビウオ型ゲカアウタレスの調査~
トビウオ型の話題が度々国会で取り上げられるなか、若手議員はこのアウタレスの情報が少ない事を悩んでいた。それならとカイは若手議員に、先日逮捕された密漁グループの一人に面会を求めた。サオは驚いたが、カイは彼等の方がトビウオ型に詳しいと述べ、若手議員はカイの言葉に耳を傾けた。
若手議員は早速密漁グループとの面会を取り付け、一行は湾岸警備隊基地へと向かった。手続きの後、若手議員一行が取調室に入ると、密漁を行っていた賞金稼ぎがいた。若手議員が密漁犯にいくつかの質問を投げたが、大した情報は得られなかった。頭を傾げる若手議員に対し、カイは席を替わるよう求めた。サオはカイが余計な事をしでかさないよう、彼の側に立っていた。カイは密漁犯がトビウオ型を何度か捕獲しているだろうと、密漁犯を問い詰めた。しかし密漁犯はカイをてきとーにあしらった。サオが密漁犯を睨みつけていると、カイは密漁犯に取引を持ち掛けた。それは密漁したトビウオ型の譲渡の引き換えに、密漁犯の刑を軽くするというものだった。いわゆる司法取引だ。サオはカイの勝手な取引に激怒したが、若手議員は交渉の余地ありと判断した。
政府との交渉の末、減刑と引き換えに密漁犯は以前捕獲したトビウオ型の死骸の差し出しに応じた。密漁犯は書類送検と国内活動一年間停止処分の罰則を呑んだ。無論この事は公にされていない。その後密漁犯の仲間がトビウオ型の死骸を運び、湾岸警備隊は海上でそれを確認し密漁犯を開放した。
2月22日土曜日、トビウオ型の死骸は早速国立研究所に護送され、調査が開始された。この死骸はカイとサオが対峙した個体よりも小さく、およそ1ヶ月前に捕獲されたものらしい。調査の末、トビウオ型ゲカアウタレスは初観測時より進化を続け、体内の汚染物質の量が上昇している事が判明した。更にガスを生成し溜め込む器官も確認され、ガスが汚染物質とゲカで構成されている事も分かった。トビウオ型は海域に流出していた汚染物質以外の汚染物質も自ら作り続け、恐らくこれが原因で海域の汚染が悪化しているのだった。持ち込まれた死骸の一部が欠損しており、内部からの圧力で破裂したように穴が開いていた。穴は体内のガス室付近だった。密漁グループによると、絶命した直後にトビウオ型の腹が突如破裂したらしい。先日の戦闘後の大爆発を含め、トビウオ型は絶命すると体内のガスを利用して大爆発を引き起こすと推測された。トビウオ型を安全に駆除するには体内のガス室を避けるだけでは足りなかった。ヒカ内蔵弾を使用すればゲカの影響が弱まり、爆発力も大幅に低下させる事ができると予想されたが、トビウオ型の個体数が不明な上コスト高の問題が残っていた。そこで研究所はヒカと薬剤を散布し、広範囲にガスの爆発力低下を狙う方式を提案した。今後トビウオ型の殲滅作戦も検討されていたため、研究所は早速対トビウオ型ゲカアウタレス爆発抑制剤の開発に取り掛かった。
トビウオ型の体に関する調査が進む中、保護海域の情報は未だ少なかった。そこで若手議員は政府に海域調査の許可を求めたが、なかなか許可は下りなかった。事態が悪化した場合の責任問題を若手議員が何度も繰り返し問い続けると、政府はついに重い腰を上げ海域調査の許可を出した。
2月28日金曜日、若手議員はカイ、サオと研究員を引き連れて海軍基地へ出向いた。そこは海軍と喧嘩別れしたカイにとって居心地は最悪だった。若手議員一行は海軍の護衛艦に乗艦し、艦はトビウオ型ゲカアウタレス保護海域に向けて出航した。
-第2話~トビウオ型ゲカアウタレスの調査~ ~完~
海中の影
水中戦
調査の末
次回-第3話~海中のトビウオ型ゲカアウタレス~