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2015年6月26日金曜日

Lonely Fantasy Land~ロンリー・ファンタジー・ランド~最終話~夢の世界の記憶~

-最終話-

   現実に戻ったジノは今すぐ分離信号を止めるよう医療スタッフに求めた。マノは無実であり、患者を夢世界に閉じ込めたのはマノの中にあるゲカが原因であると、ジノは訴えた。病院は2名のヒカ硬化症患者という別の問題も抱えており、現場は荒れていた。おかげで脳波安定化補助装置の対応にも遅れが生じ、新たな動きがあるまでジノは病室で待たされる羽目になった。

-最終話~夢の世界の記憶~

   ジノの話を聞いた医療スタッフの一人は、夢世界の崩壊を危惧した。もしマノが黒い魔法使いに敗れてしまうと、マノはおろか、夢世界に残された患者も帰還が難しくなる可能性があるのだ。更にマノが夢世界の均衡を保っている以上皆を無事現実に戻すには、彼女が夢世界に最後までとどまらないといけない可能性があると指摘した。

マノを置き去りにしたくない。どうすれば彼女を安全に送り帰す事ができるのか、ジノは悩んでいた。そうしていると、ジノはパワードアーマー(パワードスーツを着て乗り込む人間サイズの人型ロボット。人型強化装甲。)を見た。どうやら彼等は医療機器を運んでいるようだった。


   パワードアーマーが去ると、医療スタッフがジノの元に戻ってきた。医療スタッフによると、分離信号の使用はこのまま続行される見通しだ。もう時間がない。早く残りの患者を現実に送る必要があった。急いで準備し、ジノは夢世界へと向かった。

   ジノが夢世界に着くと、彼のすぐ後ろに闇が迫っていた。ジノは直ぐ様闇から離れた。分離信号の強化により、丘の下を囲む闇が、魔法村に迫っていたのだ。

魔法村でミミと合流したジノは事情を説明し、急いで残りの患者の誘導を続けた。頭上でマノと黒い魔法使いの戦闘が繰り広げられる中、刃鼠の群れがジノとミミに迫っていた。

「私がやる!ジノはみんなをお願い!」

ミミはジノの誘導を守るため、刃鼠の群れに立ち向かった。彼女は見事刃鼠の進攻を食い止める事に成功するが、村に迫る闇が直ぐそこまで来ていた。

「ジノ!急いで!」

「ミミっーーー!!」

ミミは闇に呑まれ、現実に帰された。しかしミミのおかげで、ジノは残っていた患者を現実に帰す事ができた。残りはあとマノだけであった。ジノはマノの元に向かった。

住民の避難も終わり、村を守る必要が無くなったマノは、黒い魔法使いに近付く。

「もう終わりにしよう、この夢と共に・・・」

巻き込まれる村を気にせず、マノと黒い魔法使いは互いに最大の魔法をぶつけ合った。ジノはマノの元に辿り着く。

「マノ!あとは君だけだ!」

「・・・ありがとう。でも大丈夫です。」

「マノ?」

マノは振り向き、ジノに優しく微笑む。

「私は残ります。ジノさんはみんなのところへ帰って下さい。」

「そんな・・・」

「私が止めておかないと、この子が何をするか分かりません・・・だから最後まで私がこの子を止めてみせます。」

ジノは、マノに何も言い返す事ができなかった。

「ジノさんに会えて、私は幸せです・・・眠りから覚める事ができたら、ジノさんに会いに行きます・・・」

「ああ・・・分かったよ。マノの事ずっと覚えているから・・・」

「約束ですよ、ジノさん。」

ジノは黒い穴を発し、マノは彼に背を向け、溢れる涙を隠した。ジノは覚悟を胸に、前に進む。

「えっ?・・・」

マノは肩に置かれたジノの手に驚いた。ジノは掴んだマノの肩を引き、すぐ後ろの黒い穴に彼女を放り投げた。黒い魔法使いは魔法でマノを狙うが、ジノが魔法を剣で切り裂きながら黒い魔法使いに突っ込んだ。マノは彼に手を伸ばしたが、そのまま黒い穴に入っていった。マノが最後に見たのは、ジノの背中だった。

黒い魔法使いは魔法をジノに突き刺すが、ジノは黒い魔法使いをそっと抱き締めた。

全てが真っ白になり、夢の世界は終わりを迎えた。



   ジノは長い夢から覚めると、彼は少女の膝の上に居た。少女は、サイボーグの右腕を着けていた。ミミだ。ミミはその後、右腕のサイボーグ手術を受けた。ミミはジノが寝ている間、こっそり彼の頭を自分の膝の上に乗せていた。ミミの顔を確認すると、ジノが口を開く。

「おはようございます。ミミさん。」

「ミミでいいよ。」

ジノは夢世界の崩壊と共に、記憶を失っていた。マノは新たな障害もなく意識が戻り、ゲカ硬化症の治療に励んだ。ジノは記憶を失ったが、頻繁に顔を見せるミミとマノと交流を続けていた。今回は三人でピクニックに来ていた。ミミの膝の上で横になるジノに気付き、戻ってきたマノが不機嫌になった。彼女はジノの胸に飛び込む。

「ああ~、ミミさんずるい!ジノさぁ~ん!」

「おい、ジノから離れろ!」

三人がいる丘に、優しい風が吹いた。ミミとマノのテンションに戸惑いながらも、ジノはどこか懐かしさを感じていた。

-最終話~夢の世界の記憶~ ~完~

2015年6月25日木曜日

Lonely Fantasy Land~ロンリー・ファンタジー・ランド~第4話~夢の世界への帰還~

-第4話-

   ジノとミミは、脳波安定化補助装置を付け、眠りに就いた。二人はレム睡眠に入り、夢を見始めた。すると二人の脳波は装置と同期し、ジノとミミの意識は夢世界に飛ばされた。曇りの丘に立ったジノは、どこか懐かしさを感じていた。丘の下の闇は黒い穴と同じ効果があり、現実世界に繋がっていると、ミミはジノに説明した。ジノは自身が着ている服を見てみると、全体的に暗めになっていた。


無邪気に驚くジノの横で、ミミは自身の黒い右腕を見つめていた。彼女はジノの視線に気付く。

「皮肉なものでしょ?私の腕はもう無いのに・・・只見てないで何か言えば?」

「いや、俺が見ていたのはそこじゃない。」

「じゃあどこ見てたのよ・・・」

「・・・前より服が可愛くなっているなぁ~っと。」

予期せぬ言葉にミミの顔が赤くなる。

「・・・どこ見てんのよっ!」

「いやいや、裸も見たんだし今更恥ずかしがる事じゃないだろ・・・・・・ん?」

ジノは顔を伏せるミミに近付くと、巨大化した黒い腕が彼を吹き飛ばした。宙を舞うジノはそのまま闇の中に飛んでいってしまった。

「あ・・・」

-第4話~夢の世界への帰還~

   ジノは夢世界に再び戻り、彼とミミは気を取り直した。ミミは早速、黒い穴の使い方をジノに説明した。ジノは目を瞑り頭に意識を集中させると、ノイズの様なものを感じた。それが分離信号だ。ジノはその信号を引き寄せる感覚を掴み、見事黒い穴を発する事に成功した。その後も練習を重ね、彼は黒い穴を自在に操る事ができるようになった。

   ジノは気になる事があった。何故ジノだけが現実に目覚めた時、脳に障害が生まれなかったのか。彼には一つ心当たりがあった。ジノは自ら黒い穴に入ったのだ。この事が原因だとすると、自らの意思で黒い穴を通る者は安全に現実世界に帰れる、という事になる。ジノはこの推測をミミや医療スタッフに話し、協議した結果、まずは実験してみようという事になった。

ジノとミミは早速、曇りの丘で彷徨う被験者を探した。やがて二人は一人の患者を見つける事ができた。患者はどこへ行けばいいかも分からずずっと彷徨っていた。そこでジノとミミは元居た場所に帰れると説明し、黒い穴を発した。患者に黒い穴を通るよう促すが、患者は恐れで近付こうとしなかった。威圧するミミも原因だ。そこでジノは安全である事を証明するために自ら黒い穴に入った。ジノが戻ってくるまでミミは患者と二人きりになったが、彼女は患者と一言も話さなかった。戻ってきたジノに説得され、患者は恐る恐る黒い穴に入っていった。すると患者は夢世界から目覚め、しばらく検査を受けた。検査の結果、患者に新たな障害は見受けられなかった。ジノ達はその結果に喜んだ。夢世界から安全に目覚める方法が確立したのである。

ジノとミミは何度も曇りの丘に出向き、見つけた患者を少しずつ現実世界へ送り出していた。しかしそれを快く思わない分離信号強硬派は、ペースが遅すぎると批判した。事実ジノの手法は時間と手間が掛かるのだ。これを打開するため、いよいよジノとミミは患者が多く集まる魔法村へ向かう事にした。

   ジノとミミが魔法村に着くと、二人は衝撃を受けた。村は以前と様子が違っていた。村の至る所に破壊の跡が見受けられ、物々しい雰囲気が漂っていた。ジノは住民を見つけ、何があったのかを尋ねた。ジノは住民の信頼を得ていたので、住民は重い口を開いた。

ジノが魔法村を離れた後、刃鼠の目撃数が次第に増えていった。病院の分離信号強硬派が信号の使用を増やしていたのだ。刃鼠の勢いは止まる所を知らず、村にも被害が及んだ。村の戦闘員やマホが対処していたが、刃鼠は増え続けた。村の住人が抱える不安やストレスは高まり、互いの信頼関係は崩れていった。住民同士の争いも始まり、助けてくれるマホさえ狙われるようになった。こうして、魔法村の平和は崩れていったのである。

住民がジノに助けてくれと頼んでいた頃、村の中心で戦闘が起こっていた。ジノとミミがそこに駆けつけると、住民同士で戦闘が繰り広げられていた。そこにマホもいた。彼女は戦いを止めようとしていたが、住民は束になってマホに襲い掛かる。最強の魔法使いであるマホにとって相手は大した脅威にはならないのだが、なるべく傷付けないようマホは努力していた。

「ミミ、奴らを止める!手を貸してくれ!」

ジノとミミは戦闘に加わり、無理やり戦闘を止めた。マホはジノとの再会に驚いていた。ジノが互いに引くように伝えると、集まっていた者は散っていった。

辺りが静かになると、マホは肩を落とした。彼女はジノに向かって走り、彼に抱きついた。マホは溢れる思いを堪えきれず、ジノの胸の中で泣き崩れた。彼女は尽力していたが、村の崩壊を止める事ができず、苦しんでいた。ジノは腕に抱いたマホを優しく撫でた。マホの体が火照っているのを感じたジノは、マホが患者達を夢世界に閉じ込めた犯人ではないと信じる事ができた。

暖かい空気が流れる中、一人冷めた者がいた。ミミだ。ジノが不意にミミに視線を向けると、ミミが恐ろしい形相で二人を睨んでいた。ジノは命の危険を感じた。

マホは落ち着きを取り戻し、ジノはずっと考えていた。魔法村が崩壊寸前である事、分離信号の使用類度が上がっている事、残された時間が少ない事。これ等を考慮し、ジノは魔法村に真実を話す事を考えた。だがその前に、その事をマホに話す必要があるとジノは思った。更に話した後のマホの反応を見る事によって、彼女が敵か味方かが分かるとも考えていた。マホが落ち着いたところを見計らい、ジノは夢世界の真実を彼女に打ち明けた。

自分の本当の名がマノである事、自分のせいで多くの人に迷惑を掛けた事を知ったマノは、ひどく落ち込んだ。しかし彼女は夢世界に囚われた患者を全て助けたいと思い、それをジノに伝えた。彼女の思いを聞いてほっとしたジノは、早速行動を始めた。

   ジノは魔法村の中心に住民を集めた。彼は皆に夢世界の真実を語った。ミミは群集に目を光らせていたが、住民はジノの話を黙って聞いていた。ジノが話し終えると、住民の反応はまちまちだった。歓喜する者や落胆する者、話を信じない者もいた。村に混乱が起こり、それを見ていたマノは自分の責任だと、一人絶望していた。そんなマノの元に、ジノが話しかける。

「マノは何か勘違いしている。」

「・・・何をです?」

「マノがいなかったらみんなここまで元気になっていないんだ。」

「どういう意味ですか?」

「マノのおかげでみんなの脳波は安定した。みんなの脳は回復したんだ。」

「・・・そう言われても・・・」

「後はどうするか、かな・・・」

「・・・どうって、どうすれば・・・」

「マノはこの世界で最強の魔法使いだけど、マノはこの人達をどうしたい?」

ジノの言葉を受け、マノは考えた。村の住民の事を思い、マノの目に力が入る。

「みんなを、元の世界に帰したい!」

マノが思いを口にすると、魔法村の天候が急変した。雲が渦を巻き、辺りが暗くなった。雲の渦の中から、何かがゆっくりと降りてきた。空から降りてきた何かは、全身が黒かったが、マノそっくりの姿をしていた。


「感じる・・・あれは・・・私だ・・・」

「・・・・・・なるほど。奴がマノの中にいるゲカ・・・みんなをこの世界に閉じ込めた元凶だ!」

マノの言葉を聞き、ジノは黒い魔法使いがこの世界を作った真の敵であると悟った。黒い魔法使いはマノに攻撃してきた。ジノとミミが黒い魔法使いに突撃し、激しい戦闘が幕を開けた。マノはジノに問い掛ける。

「この世界の支配者・・・そんな相手に勝ち目があるのですか?」

「きっと大丈夫だ。勝ち目がないなら初めから戦いに持ち込んだりはしない・・・恐らく奴にとってマノが邪魔な存在なんだろう。だから奴はマノを狙った・・・奴はマノの力を恐れているんだよ!」

「・・・・・・分かりました、私はジノさんを信じます!」

ジノの考えに納得したマノは気合を取り戻し、一気に空を翔る。彼女は迷う事なく攻撃魔法を全力で黒い魔法使いにぶつけ、相手もより強い魔法を撃ち返した。両者一歩も譲らず、魔法の撃ち合いで空が明るくなっていた。

「ここは一人で十分です!早くみんなを元の世界に帰して下さい!」

「・・・分かった!無理するなよ!」

ジノはマノを一人で戦わせたくなかったが、やむなくミミと地上に降り、住民を黒い穴で現実世界に誘導した。しかしそんな彼等に、更なる危機が迫った。村を囲むように、刃鼠の大群が迫っていたのだ。

「クソっ・・・ミミ、現実に戻って分離信号を今すぐやめるよう伝えてくれ。後マノが味方である事もだ。」

「それはジノの役目だよ。私じゃジノみたいに上手く話せないし。」

「しかし・・・」

「・・・それに、あの子もちゃんと守るから・・・ここは任せて。」

ミミの言う事はもっともだった。自分だけ戻るのは気が引けたが、ジノは迷っている場合ではないと、決意を固めた。

「すぐ戻る。」

「うん、待ってる。」

ミミに背を向け、ジノは黒い穴に飛び込んだ。自分の大切なものを忘れないために。

-第4話~夢の世界への帰還~ ~完~

新たな可能性
覚悟の剣
懐かしい風景

次回-最終話~夢の世界の記憶~

2015年6月24日水曜日

Lonely Fantasy Land~ロンリー・ファンタジー・ランド~第3話~脳波安定化補助装置~

-第3話-

   医療スタッフが見守る中、タスクの記憶が戻った。彼の本当の名はオカトキ・ジノ。ジュポ国出身の16歳だ。ジノが頻繁に見ていた夢は、彼が実際に遭遇した交通事故の記憶だった。彼と彼の家族が乗った車は峠で事故に遭い、車から放り出されたジノは崖から落ちた。彼はそこから先は覚えていなかった。車にはジノの父、母、姉が乗っていた。その事を思い出したジノはパニックに陥った。彼はひたすら家族の名前を叫び続けた。予測していたかのように、医療スタッフは用意していた精神安定剤をジノに打つ。ジノは次第に落ち着きを取り戻し、やがて彼は眠りについた。

-第3話~脳波安定化補助装置~

   再び目を覚ましたジノは正気を取り戻したが、彼を待っていたのは辛い現実だった。事故に遭った彼の家族は皆、既に亡くなっていた。家族の中でジノだけが生き延びたのだ。彼は現実を受け入れられず、しばらく寝込んでいた。度々医療スタッフが夢の世界についてジノに尋ねたが、彼は関心を示さなかった。

   ある日ジノが眠りから目を覚ますと、マホの膝枕を思い出した。すると彼は魔法村がなんだったのかが気になり始め、医療スタッフに声を掛けた。ジノの変化に喜んだ医療スタッフは彼に今までの経緯を語った。

   ジノが運び込まれたのは、ジュポ国チタイ副都心にある、チタイ副都心大学病院だ。この病院では、昏睡状態の患者の治療に、ある医療機器が使用されている。その機器とは、脳波安定化補助装置だ。この装置は文字通り、対象の脳波の安定化を促す装置だ。主に脳波が乱れている患者に使用されている。例えば昏睡状態の患者を意識回復まで誘導する為、この装置が使われるケースが多い。あくまで補助が目的であるので、大きな効果は望めない。だがそれは患者への負担も小さい事を意味する。尚中継器や設定を変える事でサイボーグ脳にも使用は可能である。

脳波安定化補助装置の仕組みはというと、まず患者の頭に装置を取り付け、患者の脳波を読み取る。患者の脳波を解析し、患者に最適な処置を算出する。処置を実行すると装置が患者の脳波をリアルタイムで解析しながら、微弱な信号を患者の脳に送るのだ。この装置は脳波の入出力ができるようになっている。

交通事故で意識を失ったジノにも、脳波安定化補助装置が使用されていた。

ジノが入院する病院の患者に、ゲカ硬化症を患った少女がいた。ゲカ硬化症とは、特殊なゲカにより、身体が硬化していく奇病だ。昏睡状態に陥った彼女に脳波安定化補助装置が使用された。それからしばらく経つと、少女の脳波が活性化した。それに止まらず、装置を使用していた患者の脳波も、次々に活性化していった。ところが、誰一人として目を覚ます事はなかった。この奇怪な現象に、医療スタッフは事態解明に乗り出した。患者を調べた結果、皆夢を見ている可能性がある事が分かった。各患者の脳波の反応や特徴を調べていると、驚くべき事に、患者全ての脳波が互いに同期していた。

つまり、装置を付けた患者全員が同じ夢を見ている可能性があったのだ。

これがジノ達の経験した、魔法の世界の正体だった。

しかし、この装置には互いの脳波を同期させる機能は備わっていない。脳波の同期のズレや変化を調べていると、一人の脳波が他全ての脳波を制御している事も分かった。その一人とは、ゲカ硬化症の少女だった。彼女の体に潜むゲカの力で、装置のアルゴリズムを書き換えたのだ。要するに、少女が装置を乗っ取った事になる。

脳波安定化補助装置を支配したゲカ硬化症の少女は、あのマホだった。ヒカリが以前言っていたのはこの事だ。マホの本名はクオウミ・マノ。ジュポ国出身の13歳だ。

脳波安定化補助装置はマノに支配され使い物にならなかったので、医療スタッフは装置を患者から取り外した。すると患者の安定していた脳波は活性化前に戻り、装置を付けなおすと、再び脳波は回復した。

この現象は魔法村で起こった住人が消えたり戻ったりする現象の原因だった。

マノに因って患者の脳波は回復したが、患者はマノの夢に囚われる事になってしまっていた。

現状の打開を模索した医療スタッフは装置と患者の脳波を引き離す電気信号を作り、それを試した。彼等の試みは見事成功し、患者は目を覚ました。

この分離信号が、夢世界に現れた刃鼠や黒い穴の正体だった。

ところが、分離信号により意識が戻った患者全てに、何らかの障害が見られた。黒い穴、分離信号により目を覚ましたヒカリも例外ではなく、彼女は極度の人間不信に陥った。医療スタッフは直ぐに分離信号の使用を中止し、問題は振り出しに戻った。

目を覚まし口がきける患者の多くは、夢の世界に帰してくれと懇願していた。彼等の話す夢の世界に共通性が見られた為、患者が同じ夢を見ている事が確実となった。医療スタッフは目覚めた患者の中で、唯一まともに意思疎通ができる少女に、協力を求めた。

その少女は、ヒカリだった。

ヒカリの本名はシシオウ・ミミ。ジュポ国出身の18歳だ。彼女は以前飛び降り自殺を図り、飛び降りたが、奇跡的に一命を取り留めた。しかし彼女の意識は戻らず、更に彼女が落ちた際右腕は酷く潰された為、手術で切断された。夢世界でミミの腕が不自然だったのは、この為である。

ミミは意識回復後医療スタッフへの協力を断っていたが、ミミの医療ベッドの隣で眠るジノの顔を見て気が変わった。彼女は協力に同意し、脳波安定化補助装置を付けて再び夢世界に戻れるか試してみた。ミミは成功し、夢世界の経験者なら自由に行き来できる事が判明した。彼女は分離信号を感じ取れる事に気付き、練習すると、その信号を操作できるようになった。ミミが夢世界で黒い穴を出せたのは、こういう事であった。医療スタッフはミミに夢世界の調査を依頼し、彼女はそれを実行した。やがて夢世界でジノと再会し、彼を現実へ帰そうとしたが失敗し、以来ミミは心を閉ざしたままだ。

   医療スタッフはジノに今までの経緯を説明し、彼にも夢世界の調査を頼んだ。医療スタッフは少し焦っているように見え、ジノはそれを問い掛けてみた。すると医療スタッフは小声で話し始めた。

病院内では、分離信号強硬派と、慎重派に分かれていた。障害を誘発する事を懸念し、慎重派は調査を進めるべきだと主張した。しかし強硬派は、手段があるなら使える内に使った方が良いと反論した。しかし、強硬派には別の思惑があった。強硬派の一部に、脳波安定化補助装置の開発、研究、あるいはメーカーと関係を持つ者達がいた。彼等にとって今回の事態は邪魔でしかないのだ。確かに患者の脳波は回復したが、それの主な原因はマノであり、装置の成果ではない。更に装置はマノに掌握され大した情報も得られず、装置の研究開発も中断を余儀なくされていた。強硬派は早くこの件を処理したかったのだ。

ジノは状況を理解したが、マノが自ら患者達を夢世界に閉じ込めているとは思えなかった。彼女の持つゲカがそうしているのだと、マノは魔法村の住人を大切に思っている。ジノはそう信じていた。

マノを助けたい。

ジノは医療スタッフに協力する事を伝えた。しかし、ジノにはもう一人、助けたい少女がいた。

ミミだった。

ジノはミミに何度も協力を求めたが、彼女は断り続けた。

「お願いします。」

「・・・やだ。」

ミミの機嫌は悪かった。と言っても、ミミは他の人間には口もきかなかったが、ジノとだけ会話していた。彼女がジノに心を開いている証拠だった。

「お願いします。ミミさんの言う事ちゃんと聞くから。」

ミミが2歳年上である事を知ったジノは以降、彼女にさん付けで話すようになっていた。その新鮮さをミミは密かに楽しんでいたが、彼女はもう十分のようだ。

「・・・ミミでいいよ。」

何度も説得するジノに、ミミはついに折れた。

ミミもジノに協力し、夢世界へ彼に付いて行く事を決めた。

準備が整い、ジノとミミは再び脳波安定化補助装置を付け、眠りに就き、夢の世界に向かうのだった。

-第3話~脳波安定化補助装置~ ~完~

特訓と試み
村の異変
黒の魔法使い

次回-第4話~夢の世界への帰還~

2015年6月23日火曜日

Lonely Fantasy Land~ロンリー・ファンタジー・ランド~第2話~タスクの悪夢の果て~

-第2話-

   タスクは再びあの夢を見た。荷車から放り出され、崖を落ちていく夢を。彼が目を覚ますと、目の前には、魔法使いマホの笑顔があった。

「おはようございます。タスクさん。」

「おはよう、マホ。」

-第2話~タスクの悪夢の果て~

   タスクはまたマホの膝に横になっていた。これは彼の意思ではない。タスクは自身が気に入っている場所でよく昼寝をしていた。そんな彼を見つけては、マホはこっそり彼の頭を自身の膝に乗せていた。タスクへの彼女の悪戯だ。

   マホはこの魔法村が誕生した頃から村を見守っている最強の魔法使い。彼女は困っている村人を助け、村を支えている功労者だ。村の住人は皆彼女を慕い、マホの優しい笑顔は村の平和を象徴している。マホはタスクと親しくしていたが、誰もそれに不満を持つ者はいなかった。タスクも村の住人に慕われていたからだ。彼は村を守る戦士として勤め、手が開いた時は村の仕事を手伝っていた。

   タスクが魔法村に住み始めてしばらく経ち、彼は楽しい毎日を過ごしていた。透き通った川が村中を流れ、見た事がない花や果実も多く、村は自然の恵みに溢れていた。石畳の道にレンガの家屋、絵本の中の様な風景に、タスクは感動を覚えた。住民も自身の仕事に励み、村での生活を満喫していた。彼等もタスクと同様、皆過去の記憶が喪失しており、村に着くまで彷徨っていた。以前住民がいきなり消えていきなり戻ってくる妙な現象が起こっていたが、やがてそういった事は見られなくなった。村は再び平和になったが近頃、村の外で刃鼠の出現、刃鼠に襲われて行方不明になる者が複数確認された。住民は気に掛かったが、村の中は安全なので怯える事はなかった。

   いつも通りタスクが草の上で昼寝をしていると、マホに起こされた。いつもと様子が違う彼女にタスクがどうしたのか問い掛けると、マホは言う。

「何か来ます!」

マホが示す場所にタスクが向かうと、見覚えのある人影があった。タスクは自分の目を疑った。

そこにいたのは、ヒカリだった。

黒い穴に引きずり込まれたはずの彼女が、タスクの目の前にいる。しかし彼女は以前とは違っていた。服は暗めで、白く発光していた右腕は、黒く発光していた。ヒカリは険しい顔をしていたが、タスクを見つけるや否や、顔が一瞬和らいだ。


ヒカリにまた会えた。

再会を喜ぶタスクはヒカリに駆け寄る。

「ヒカリ!無事だったのか。今までどこにいたんだ?」

「その名前で呼ばないで。」

「え?・・・」

ヒカリの態度は冷たかった。彼女の反応にタスクは動揺した。まるでヒカリが別人のようだった。

「ヒカリ、一体どうしたんだよ・・・」

「それは本当の名前じゃない・・・ヒカリだなんて・・・これを見てもそう言えるの・・・」

ヒカリは自身の黒い右腕を睨んでいた。

「もしかして、記憶が戻ったのか?それにその腕・・・一体何があったんだ?」

「この腕は偽物だよ・・・この世界も・・・」

「偽物?・・・一体どういう意味だ?」

「帰ってから説明する。お願い、私と元の世界に帰ろう?」

「帰る?元の世界?他の世界があるのか?」

タスクはヒカリの言葉を懸命に聞くが、話が理解できずにいた。ヒカリは手を向け念じると、そこにあの黒い穴が出現した。タスクは目の前の光景に驚きを隠せない。

「嘘だろ・・・」

「私と一緒に帰ろう?そうすれば全て分かるから・・・お願い。」

ヒカリは優しい顔でタスクに手を差し出すが、タスクはどうすればいいのか分からずにいた。二人に動きがないまま時が過ぎると、空からマホが飛び降りてくる。

「大丈夫ですか?タスクさん。」

タスクの側に降りてきたマホの顔を見ると、ヒカリの顔は怒りに満ちていく。

「ジノ!いや、タスク!そいつから離れろ!そいつが全ての元凶だ!」

マホとタスクが見つめ合い、困惑していると、ヒカリは話を続ける。

「そいつがこの世界を作った張本人だ!その女がみんなをここに閉じ込めているんだよ!」

「ち、違います!私そんな酷い事していません!」

マホはヒカリの言葉に反論するも、ヒカリは黒い右腕を巨大化させ、マホに向ける。

「この糞ガキ!タスクを返せぇ!!」

マホを狙うヒカリの黒い腕を、タスクが剣で弾く。

「ヒカリ!やめてくれっ!!」

タスクはヒカリに剣を構えた。それを見たヒカリはショックを受け、攻撃をやめる。

「タスク・・・ごめん・・・」

ヒカリは肩を落とし、静かに黒い穴に入って姿を消し、黒い穴も消え去った。

「待て!ヒカリぃーーー!!」

タスクが最後に見たのは、ヒカリの泣き顔だった。

   ヒカリが去った後も、タスクは彼女の言葉を理解できずにいた。以前ヒカリについて話を聞いていたマホは、落ち込むタスクを慰めた。一部始終を知った住民は不満を抱え、時が過ぎた。ある日、タスクとマホの前にヒカリが再び姿を現した。彼女の目は力で満ちていた。

「・・・もう一度聞くよ・・・タスクお願い、私と一緒に帰ろう?私みんなを助けたいの・・・」

「ならなぜマホを攻撃した?彼女が何をした?」

「・・・そう・・・彼女の肩を持つんだ・・・ふ~ん・・・あっそ・・・・・・・・・なら、力ずくでも!君を連れ帰ってみせるっ!!」

ヒカリの態度は急変し、彼女は前に飛び出した。タスクは剣を抜いたが、ヒカリはタスクを無視し、マホを狙う。タスクは咄嗟にヒカリに突撃し、彼女は吹き飛ばされた。ヒカリは飛ばされながらも右腕を巨大化させ、マホに向ける。

「・・・くっ、カースド・フィンガー!」

「アース・ウォール!」

そう叫ぶとマホは地面から複数の土柱を出し、ヒカリの攻撃を防いだ。激しい戦闘の中、タスクとヒカリは互いに急所を狙わなかった。2対1でヒカリは劣勢を強いられ、彼女に勝ち目はなかった。共闘するタスクとマホを見て、ヒカリが吐き出す怒りはいつしか悲しみに変わっていた。何もできないと自覚したヒカリは諦め、攻撃をやめた。涙を堪え、ヒカリは静かに黒い穴を発した。顔を上げタスクが目に入ると、耐え切れずヒカリは涙を流す。

「・・・ごめんね・・・君を助けられなかった・・・」

「ヒカリ・・・」

タスクは言葉を失った。ヒカリの泣き顔を見て、心が張り裂けそうになっていた。ヒカリは彼に背を向け、黒い穴に消えていった。

(またヒカリを助ける事ができなかったのか・・・)

タスクは初めてヒカリを失った日を思い出していた。ヒカリを助けられなかった怒りが次第に込み上げ、拳に力が入る。タスクは怒りに身を任せた。

「ヒカリぃーーー!!!」

「タスクさん!」

タスクは走り出し、マホの声は彼に届かなかった。怒りと悲しみで一杯のタスクは何も考えられず、黒い穴に突っ込んでいく。黒い穴が消える寸前、タスクの姿は穴に消えた。

   少年は夢を見ていた。彼がよく見ていた夢だが、今回は鮮明に見えた。

セダンの車が峠を走っていた。車の中には家族4人が乗っていた。それは少年とその父、母、姉だった。車がカーブに差し掛かった頃、速度を上げ車線を越えた対向車が現れた。互いの操作は間に合わず、2台は激突した。少年の乗る車は吹き飛び、ガードレールを破壊した。その衝撃で少年は宙に浮き、ドアのガラスを突き破った。少年は崖を落ちていき、下の木々に衝突した。

そこで、少年の夢は終わる。

   少年は目を覚ました。あまりの眩しさに、彼は目を開ける事ができなかった。目は次第に慣れ、視界が開いていく。少年は白い天井を見た。彼は部屋を見渡し、自身が病室にいる事を知る。体が重く、見ると少年の体には筋肉刺激用の器具等の医療器具が付けられていた。彼の医療ベッドの周りには、少年の目覚めを喜ぶ医療スタッフが集まっていた。ぼやける意識の中、少年が不意に横を向くと、彼の目が大きく開いた。

少年の隣の医療ベッドにいたのは、ヒカリだった。よく見ると、ヒカリの右腕は無くなっていた。

-第2話~タスクの悪夢の果て~ ~完~

事故と治療
二人の少女
新たな試練

次回-第3話~脳波安定化補助装置~

2015年6月22日月曜日

Lonely Fantasy Land~ロンリー・ファンタジー・ランド~第1話~記憶喪失と魔法の世界~

初めに光があった。
光は人と共にあった。
光は人と交わした絆を尊んだ。
しかし人はそれを拒んだ。
一部の光の使者は光の上に立とうとし、
後に影となったが、
それは光に打ち勝てなかった。
そこで影は別のものに目を向けた。
それは光がもっとも尊ぶものであった。

光の使者と影は「アウター」と呼ばれ、彼らは自らの力を地に宿した。
光の力は「ヒカ」、影の力は「ゲカ」と呼ばれ、アウターに遠く及ばないものの、
人にとっては驚異的な力だった。
この二つのアウターの力はあらゆるものを侵し、憑かれたものを、「アウタレス」と呼んだ。
ヒカは人の心の中にある聖を照らし、ゲカは闇を照らす。

アウターは殆ど干渉する事なく、ただ人の経緯を見てきた。
そして人はアウターの力を利用し、翻弄され、各々の生を歩んでいた。


-第1話-

   少年は夢を見ていた。夢の中で、少年は乗っていた荷車から放り出され、崖を落ちていく。荷車には他に誰かが乗っていた。しかし誰かは分からない。崖を落ちる少年の視界は次第にぼやけ、彼は目を覚ました。彼は周りを見渡すと、自身が丘にいる事を知った。緑が覆うこの丘には霧が掛かっていて、空は曇っていた。丘の上方はやや明るく、下方は闇が広がっていた。少年は寒さを感じ、自身が裸である事に気付く。

「なんで裸なんだ?ここは・・・そもそも俺は一体・・・」

-第1話~記憶喪失と魔法の世界~

   少年は過去を思い出そうとするが、何も思い出せなかった。少年は記憶を失っていた。

少年は近くの水溜りに写る自身の顔を覗いた。年は10代半ばだろうか、見ていても違和感だけが残った。何も分からないので、少年は移動する事にした。しかし、どこにいけばいいのか分からなかった。

「確か山で遭難した時は、下に進むか水の流れを下っていけばいいんだよな?」

誰も答えてはくれない。少年は丘の下方を見つめた。闇が広がっていて、そこへ向かう気にはなれなかった。丘を上る気にもなれず、仕方なく少年は丘の横を歩き始めた。

すると少年は小屋を見つけ、その小屋の中に入っていった。小屋は無人で古びた雑貨が置いてあった。少年は小屋の中を物色し、服や小道具を見つけ、身に着けた。


続いて暖炉を見つけ、少年は使ってみようと考えた。彼は火種になりそうな物を探したが、面倒臭くなって暖炉の前に座り込んだ。少年はふと掌を見つめ、呟く。

「火が欲しいなぁ・・・」

すると突然、掌に小さな火が付いた。

「う?・・・お、おぉおおお!!」

少年は驚き、慌てて火を消そうと地面を転がった。火は直ぐに消え、少年は落ち着きを取り戻した。少年は恐る恐る掌を前に差し出し、火をイメージする。

しかし、何も起こらない。集中力が足りないのか、少年は叫ぶ。

「火よっ!」

火が勢いよく噴いた。火は近くの家具に燃え移り、少年は慌てて叫ぶ。

「み、水ぅーーー!!」

今度は少年の頭上から水が勢い良く落ち、火は消えたが、少年はずぶ濡れになった。

「何故に・・・」

その後少年は実験し、風や電気、土等を放つ事に成功した。どうやらここは、魔法が使える世界らしい。少年は小屋を出る事にした。

少年が歩いていると、大きな鼠の様な生き物に遭遇した。その生き物の体には刃が付いており、刃鼠という感じだ。


刃鼠は少年を睨み、威嚇してきた。

「猛獣に会っても走って逃げちゃ駄目なんだっけ?自分を大きく、強くみせてゆっくり後ずさり・・・」

少年はなるべく冷静さを失わないよう努力し、懐から鉈を取り出した。刃鼠を威嚇しながら、少年はゆっくりと後退する。刃鼠は少年に近付いていき、彼に襲い掛かった。

「やっぱ駄目かぁあああ!」

少年は逃げるが、刃鼠は直ぐに追いつき、少年は地面に倒された。少年は倒れながらも刃鼠と格闘し、刃鼠を振り払おうとした。すると刃鼠は空中に黒い穴を放った。その黒い穴はどこか、丘の下方にある闇によく似ていた。刃鼠は少年の足を捕らえ、少年を黒い穴に引きずり込もうとした。

「フレイム!」

少年が手を突き出しそう叫ぶと火が放たれ、刃鼠は火だるまになった。それでも尚刃鼠は少年を引きずり、少年は刃鼠の首をめった刺しにした。やがて刃鼠は死に、黒い穴も消えた。少年は一息つき、再び歩きだした。

   道中、少年は丘の上を目指す人達に出会った。話を聞くと、彼等もまた少年と同じ様に記憶がなく、丘の上の明かりを目指して歩いていた。少年も一行に加わり、丘の上を目指した。しかし行く手を阻む様に、次々と刃鼠が彼らを襲う。刃鼠の放つ黒い穴に引きずり込まれた者は、二度と目にする事はなかった。一行は戦っては進み、ボロボロになりながらも、傷付いた体を起こしてはまた歩き続けた。人は減り、気が付けば少年は一人になっていた。

   ある日、座り込み辺りをキョロキョロする少女に、少年は出会った。

その少女は、裸だった。

(フレイム・インフェルノ・ファイヤー・コンバッション・ブラスト・バーニング・ボンバー・フレイムっ!!!)

と、少年のハートが叫んだ。何故かフレイムを二回叫んでいた。気に入っているのだろう。それはそうと、少年は突然の光景に動揺していた。震える口を抑えながら、彼が少女に話し掛けようとした時、少年は少女が震えている事に気が付いた。少年は自身が初めてこの丘で目覚めた日の事を思い出した。彼は冷静になり、少女の前に膝を付いて彼女に上着を差し出す。

「宜しければ使って下さい。」

「・・・ありがとうございます・・・ここはどこですか?」

少女は小声で答えた。少年と同い年くらいだろうか、話を聞いてみると、彼女もまた少年と同様、記憶がなかった。彼女の右腕は何故か、微かに白く発光している。

「目が覚めた時からこうなんです。変な感覚だし・・・」

「綺麗だと思うよ。そこまで悪くないんじゃないかな。」

「・・・そ、そうかなぁ・・・」

不安げな少女を少年は気遣い、彼女は少しずつ落ち着きを取り戻していった。

少年は自身が知っているいくつかの家屋の内、一番近い方へと少女を案内した。とりあえず彼女に服を着せ、少年はここまでの成り行きを全て話した。少女は魔法について疑ったため、自身で魔法を試してみる事にした。

「フレイム!」

少女が発光する右腕を突き出しそう叫ぶと、彼女の右腕が火に包まれた。二人は慌てふためいた。

「い、今消すから!」

「待って!」

魔法で火を消そうとした少年を、少女が止めた。彼女の右腕は燃え続けたが、右腕に痛みはなかった。少女はそのまま遠くにあるバケツに右手を伸ばすと、彼女の右腕が巨大化した。質量はどうなっているのかは分からないが、少女は魔法で右腕を自在に操る事ができた。


やがて少女は少年に心開いていき、彼と行動を共にした。二人は丘の上にある微かな明かりを目指して歩き出した。

   少年と丘を歩いていると、少女はずっと抱いていた不満を口にする。

「ねぇ君、二人共名前があった方がいいんじゃないかな?」

「そうだなぁ~。気にしなくなっていたもんなぁ~。」

「じゃあさ、私が付けてあげよっか?」

話し合った結果、少年と少女は互いに名前を付け合う事にした。少年の名はタスク、少女の名はヒカリとなった。ヒカリは自分の名をえらく気に入った。タスクも、満更でもない様子だった。

   タスクとヒカリは仲を深め、度々行く手を塞ぐ刃鼠を倒しながら丘を上った。そんなある日、二人は新種の刃鼠に囲まれてしまった。戦闘に入り、タスクとヒカリのコンビネーションは強かったが、敵の数が多すぎた。二人は苦戦を強いられ、ヒカリは刃鼠が放った黒い穴に引きずり込まれてしまう。タスクは怒りで我を忘れ、残りの刃鼠を倒した。

終わりの見えない歩みと戦いに疲れ果て、タスクは地に倒れた。彼は初めに見た悪夢を再び見た。目を開けると、側に少女が立っていた。意識がぼんやりしていたが、タスクは確かに少女を見た。10代前半に見えるその少女は、身なりが整っていて、綺麗だった。完全に場違いな彼女は、タスクにそっと微笑んだ。やがてタスクの瞼はゆっくりと閉じ、彼が目覚めた頃にはその少女はどこにもいなかった。

「さっきのは一体・・・」

そう呟きながらも、タスクは自分の体が軽くなった様に感じた。彼はその後も歩き続け、地に倒れて意識が薄れる度、微笑む少女を見た。

「あれが死神とかいう奴か?・・・やけに可愛い死神だな・・・」

しかしタスクはまだ生きている。そして彼はある事に気付いた。タスクが意識を失っている間、刃鼠に襲われなかった。

「あの子が守ってくれていたのか?」

答えが見出せないまま、タスクは再び歩き出した。彼は刃鼠の体に付いている刃は武器になると考え、刃鼠の死体から刃を剥ぎ取って加工し、武器にした。

刃鼠との戦いで何度も何度も傷付いたタスクは地に倒れ、再びあの悪夢を見た。彼が目を覚ますと、タスクはあの微笑みかける少女の膝の上で横になっていた。タスクの目覚めに気付くと、少女が話しかけてくる。

「おはようございます。魔法村へようこそ。」

「ここは?」

ぐっすり寝ていたタスクは目を擦りながら問うと、少女はクスッと笑う。

「ここは魔法村といいます。曇りの丘の頂上にある、恵み溢れる村です。」

「頂上に着いたのか・・・君が俺を守っていてくれたのか?」

「はい、少しだけ。あなたが私の魔法が届く範囲に入ってきてくれたおかげです。直ぐにでも迎えに行ってあげたかったのですが、他にも助けを必要としていた人達がいたので・・・ごめんなさい。」

タスクは少女の膝から体を起こす。

「いや、助かった。ありがとう。俺の名はタスク、君は?」

「私はマホ。この村で魔法使いをしています。」


タスクが魔法村を見渡すと、そこにはまるで絵本の中の様な、幻想的な光景が広がっていた。

-第1話~記憶喪失と魔法の世界~ ~完~

魔法村の生活
予期せぬ再会
新たな目覚め

次回-第2話~タスクの悪夢の果て~

Lonely Fantasy Land~ロンリー・ファンタジー・ランド~

-plot-あらすじ

人が光の力と影の力を利用し、翻弄される時代。

少年は夢を見た。
自身が荷車から放り出され、崖を落ちていく夢を。
目が覚めると、彼は見知らぬ丘にいた。
ここがどこなのか、自分は一体何者なのか。
やがて記憶喪失の少年は、自身が魔法の世界にいる事を知る。

夢、黒い穴、魔法使いの少女。
全てが繋がる時、少年の新たな物語が幕を開ける。

-第1話~記憶喪失と魔法の世界~↓
http://worldgazerweb.blogspot.jp/2015/06/lonely-fantasy-land1.html
-第2話~タスクの悪夢の果て~↓
http://worldgazerweb.blogspot.jp/2015/06/lonely-fantasy-land2.html
-第3話~脳波安定化補助装置~↓
http://worldgazerweb.blogspot.jp/2015/06/lonely-fantasy-land3.html
-第4話~夢の世界への帰還~↓
http://worldgazerweb.blogspot.jp/2015/06/lonely-fantasy-land4.html
-最終話~夢の世界の記憶~↓
http://worldgazerweb.blogspot.jp/2015/06/lonely-fantasy-land_26.html
設定資料↓
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「Lonely Fantasy Land~ロンリー・ファンタジー・ランド~」
「World Gazer~ワールド・ゲイザー~」シリーズ。

※重複投稿です。
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2015年6月15日月曜日

Kind Soft Song~カインド・ソフト・ソング~設定資料

-plot-あらすじ

人が光の力と影の力を利用し、翻弄される時代。

繁華街や商店街で賑わいを見せるジュポ国チタイ副都心。
路上ライブが多いこの地に、賞金稼ぎの女、ソウヤ・モコが降り立った。
モコは駅前で音楽活動をする女子学生、オトシキ・ユウと出会う。
難病を患いながらも、ユウの優しい演奏は周囲を魅了する。
ユウと同じく音楽活動をし、彼女の同級生である男子、カフミ・ジュウ。
彼等の出会いが、新たな歌を生む。

-introduction-序章

初めに光があった。
光は人と共にあった。
光は人と交わした絆を尊んだ。
しかし人はそれを拒んだ。
一部の光の使者は光の上に立とうとし、
後に影となったが、
それは光に打ち勝てなかった。
そこで影は別のものに目を向けた。
それは光がもっとも尊ぶものであった。

光の使者と影は「アウター」と呼ばれ、彼らは自らの力を地に宿した。
光の力は「ヒカ」、影の力は「ゲカ」と呼ばれ、アウターに遠く及ばないものの、
人にとっては驚異的な力だった。
この二つのアウターの力はあらゆるものを侵し、憑かれたものを、「アウタレス」と呼んだ。
ヒカは人の心の中にある聖を照らし、ゲカは闇を照らす。

アウターは殆ど干渉する事なく、ただ人の経緯を見てきた。
そして人はアウターの力を利用し、翻弄され、各々の生を歩んでいた。


-episode-各話
 -1._歌う二人と賞金稼ぎ
 -2._ユウとジュウの道
 -3._ユウとジュウの希望
 -4._ヒカ硬化症との戦い
 -5._終_ユウとジュウの歌

-character-登場人物
 -Moko Souya
  -03/29生まれ。
ソウヤ・モコ。26歳。女性。ジュポ国出身。白兵戦に長けた賞金稼ぎ。思い切りがいい性格をしている。


 -Yu Otoshiki
  -05/15生まれ。
オトシキ・ユウ。17歳。女性。ジュポ国出身。音楽活動をする女子学生。アコースティックギターを弾きながら歌う事を好み、たまに作曲をしている。彼女はヒカ硬化症という奇病を患っている。周りに優しく、怒る時はちゃんと怒る。


 -Jyu Kafumi
  -10/31生まれ。
カフミ・ジュウ。17歳。男性。ジュポ国出身。オトシキ・ユウの同級生。音楽活動をし、ユウと同じくアコースティックギターを弾きながら歌う事が多く、たまに作詞をしている。彼はやや天然ボケである。


 -Iyo Himita
  -09/28生まれ。
ヒミタ・イヨ。40歳。男性。ジュポ国出身。チタイ副都心大学病院に勤める医師。ヒカ硬化症の治療法を模索している。


 -Hinoho Kunau
  -08/31生まれ。
クナウ・ヒノホ。25歳。男性。ジュポ国出身。パワードアーマー乗りの賞金稼ぎ。


*クナウ・ヒノホが使用するパワードアーマー、NLJ74-ジュポ国産300kg級軽量パワードアーマー。

 -Kajika Muhi
  -11/03生まれ。
ムヒ・カジカ。24歳。サイボーグの男性。ジュポ国出身。隠密行動を得意とする賞金稼ぎ。彼の体は汎用性を重視しているため、顔や体の部位を換えるといった変装に向いている。


-setting-設定

-race(種族)

 -Outer
  -アウター。この世界とは別の存在。ソトの者達。人の姿をしているが、人と次元が違う。かつては人との交流が多かったが、現代では非常に少ない。元々全てのアウターが光に属していたが一部は影の者となった。人に手を下す際は主にアウタレスやアウターの力を間接的に行い、直接手を下す事は殆ど無い。何故なら人の持つ力はアウターに何の意味も持たないからである。特徴としては表情が少なく、地上の物理現象と干渉しない事が多い。
  -of Light(Hika)
   -光に属する者達。光の使者。ヒカの者達。元々光と共に人を見守っていたが虚栄心に満ち始めた人に拒まれてからは多くが人に背を向けた。極僅かだが人を陥れようとする影の者達から人を見守っている者もいる。
  -of Shadow(Geka)
   -影、ゲカの者達。元々は光の使者であったが、光より優れた存在になろうと光を嫉み、反逆した。しかし光には敵わない為、代わりに光が大切に思う「人」を陥れる行動に出る。ヒカの者達同様極僅かに人に友好的な者もいる。
  -Outer Material
   -アウターマテリアルと呼ばれるアウターの力、物質。ゲカの者達が地上に宿した「ゲカ」、ヒカの者達が地上に宿した「ヒカ」の二種類が存在する。これらアウターマテリアルはこの世の物では無く、時に物理法則を超越する現象を引き起こす。ヒカやゲカについて分かっている事は、粒子に様々な特性を有し他の物質と混合するとその物質の性質を驚異的に高める事が出来る事、人の意志や感情に反応する事、そして生き物に接触するとその生き物を侵し、何等かの突然変異を引き起こす事である。時折アウターマテリアルそのものから生物が誕生する事もある。又アウターにより突然変異した存在を「アウタレス」と呼ぶ。アウターマテリアルは基本生物にとって毒である為、接触し続けると大抵は死に至る。アウターマテリアルとの混合材は制御不能に陥る危険性があるものの、個々の性能は恐ろしく高い。例を挙げると、物質と物質の接合を強化する性質を持ったアウターマテリアルを用いると、その物質の強度は上がり、高エネルギー反応の性質を持ったアウターマテリアルと爆発物を混合すると、爆発物の威力が上がる。製造に成功すれば桁違いの性能を発揮する反面、慎重に取り扱わないと暴走し非常に危険であり、又個体差に因る性能の違いが激しい為量産には全く向かない。アウターマテリアルの性能や影響力は濃度に比例する。ヒカは何等かに反応すると白く発光し、ゲカは黒く発光する。
   -Hika
    -ヒカと呼ばれるアウターマテリアル。ゲカの驚異に歎く人を見、憐れんだヒカの者達が地に宿したと言われている。ゲカや強い思いを持った人に反応し、量が同等であればゲカを打ち負かす力を持つが、ゲカに比べ数が圧倒的に少ない。
   -Geka
    -ゲカと呼ばれるアウターマテリアル。ヒカに敵わないもののヒカを苦しめる為、「人」を陥れる事を考えたゲカの者達が地に宿したと言われている。ヒカや強い思いを持った人に反応し、量が同等であれば性能はヒカに劣るものの、数が多い為容易に集める事が出来る。但し毒性や生物に与える悪影響はヒカよりも強い。
  -Outerless
   -アウタレス。ソトの力に憑かれた存在、生物。ヒカやゲカに何らかの方法で接触、もしくは体に取り込む事でそれらを宿し、突然変異や影響を受けたもの。ありとあらゆる生物からアウタレス化するが、人型が最も高い能力を秘める。人型が特別な理由は「人」だけが自我や強い意志を持つからだと言われている。しかしアウタレス化した殆どの者達はその力に呑まれ自我を失う為、アウタレス化しても自我を保つ事例は非常に少ない。
   -Human type
    -人型アウタレス。高い能力を持ち、人の形をしたアウタレスを指す。人の一部から派生するものと人そのものがアウタレス化するものがあるが後者の場合、自我が残る可能性があり、大きな脅威になりうる。
   -Machine type
    -機械型アウタレス。機械を取り込んだアウタレスを指す。アウタレスと機械が融合する事は殆ど無いが、稀に、もしくは故意に機械と融合したアウタレスが生まれる事がある。

   -Vital Spanner(Vinner)
    -バイタルスパナー。バイナーと呼ばれている。アウターの力を宿す者。アウタレスと同じくヒカ又はゲカの力を持つが、アウタレス特有の暴走や制御不能状態に陥るリスクは確認されていない。何故ならバイナーは本人の意志の有無に関係無くアウターと契約し、本人の寿命の分だけ力を発動出来るからである。使用出来る能力は多岐にわたり、世界に対する影響力が高い程消費する寿命が増える。

   -Small Human
    -小型人間。身長は人間の約10分の1の大きさしかない。但し身体能力は高く、それ以外の特徴は他の人間と何も変わらない。ヒか又はゲカの影響でこの様な種族が生まれたが、人間と同様アウターマテリアルは彼らにとっても毒である。体の大きさを活かし精密作業の現場で威力を発揮する。

  -Outerless Evaluation(アウタレス評価)
   -アウタレスの特徴や能力を把握する為に用いられる基準。数値で表す事でどの様に対応すべきか迅速に判断する事ができる。対象のアウタレスを評価する際は専門の調査員が行うのが一般的である。しかしこの作業は危険が付き纏い、更に迅速かつ的確にこなさなければならない為、経験豊富な調査員は特殊な訓練、装備を得ている。国によってはこの評価基準がアウタレス以外でも適用されている。
   -Danger Level(危険度)
    -アウタレスの危険度を示す指数。例え戦闘力が無くとも数値が高ければ高い程周囲に危害を加える可能性が上がる為、直ちに対処しなければならない。
    -0.Low Danger(危険度低)
    -1.General Handle(一般処理)
    -2.Government_Handle(行政処理)
    -3.Specialist_Handle(専門家処理)
    -4.Police_Handle(警察処理)
    -5.Military_Handle(軍事処理)
   -Threat Level(脅威度)
    -アウタレスの脅威度を示す指数。あくまでアウタレスの戦闘力や潜在能力を評価する為、高い数値を記録しても攻撃性が無ければ危険視される訳ではない。
    -0.Low Threat(脅威度低)
    -1.Animal Class(動物級)
    -2.Solider Class(兵士級)
    -3.Squad Class(分隊級)
     -歩兵約8~14名相当。
    -4.Platoon Class(小隊級)
     -歩兵約26~64名、分隊約2~4個、車両約3~7両、航空機約3~6機相当。
    -5.Squadron Class(中隊級)
     -歩兵約80~250名、砲約2~16門、航空機約12~24機、小隊約3~6個相当。
    -6.Battalion Class(大隊級)
     -歩兵約300~1500名、中隊約2~7個相当。
   -Density Level(濃度)
    -アウターマテリアルに侵された物体の濃度を示す指数。侵された肉体だけでなく、加工された資材に接触すると侵された肉体と似たような症状や現象が起きる可能性が高い。
    -0.~0.09%(影響無し)
    -1.0.1~5.0%(健康被害)
    -2.5.1~10.0%(身体能力向上)
    -3.10.1~20.0%(肉体的変異)
    -4.20.1~50.0%(超能力発現)
    -5.50.1~80.0%(肉体侵食)
    -6.80.1~100.0%(人格障害)
    -7.100.1%~(一体化)

-geography(地理)

 -International Union(IU)
  -国際同盟。各国の共生、発展の協力に加盟して集まった国際組織。
  -aircraft
   -NTH90
    -重量:6.4t
複数の国が開発に関わり、陸、海軍用があり、多国で多用されている高性能な国際同盟産軍事汎用ヘリ。

 -Jupo(Jup)
  -ジュポ国。東に巨大な海を臨み、多くの島からなる経済大国。
  -Chitai
   -チタイ副都心。大きく栄え、ジュポ国が誇る副都心の一つである。過去に袋状の池があった。
  -weapon
   -JDH97
    -高コストなジュポ国産セミオート式ヘビーアンチマテリアルライフル。
   -SKJ99
    -戦闘機や対空で用いられるジュポ国産アンチマテリアルマシンガン。
  -automobile
   -NTJ74
    -重量:38t
車体傾斜機能を持ち、低車高なジュポ国産第2世代主力戦車。


   -HTJ10
    -重量:44t
姿勢制御機能、モジュール装甲を持ち、小型軽量、高性能なジュポ国産主力戦車。
  -Powered Armor
   -PVJ02 PiVuJa2
    -種別:200kg Class Very Light Powered Armor(VLPA) 重量:210kg
通称ピヴジャ2。歴史があり、各国に大きな影響を与え、派生や模倣を多く生み出しているジュポ国産一般用200kg級超軽量パワードアーマー。
   -NLJ74 NaLuJa74
    -種別:300kg Class Light Powered Armor(LPA) 重量:380kg 防御力:<12.7mm
通称ナルジャ74。NTJ74の技術を流用したジュポ国産300kg級軽量パワードアーマー。


   -HSJ10 HiSuJa10
    -種別:400kg Class Standard Weight Powered Armor(SWPA) 重量:440kg 防護力:<30mm
通称ヒスジャ10。姿勢制御機能、モジュール装甲を持ち、小型軽量、高性能、HTJ10の技術を流用したジュポ国産400kg級標準重量パワードアーマー。

 -Cngu(Cng)
  -クング国。雷と雨が非常に多く、国を横断する川を持つ開発途上国。紛争の問題を抱えている。
  -Oprimi Putii
   -オプリィミィ・プティー村。クング国の少数部族が住む村である。自警団を有しており、政府や他の武装組織と度々衝突している。村人は自らの部族に誇りを持っており、倒した敵を称える風習がある。

-technology(技術)

 -building(建築物)
  -Very Large Floating Structure(VLFS)
   -超大型浮体式構造物。Artificial Island(人工島)、Floating City(浮体都市)、巨大人工浮島、メガフロートとも呼ばれる。

 -fuel(燃料)
  -Geka Compressed Fuel
   -ゲカ圧縮燃料。物体を圧縮する性質を持ったゲカを利用し、相性の良い燃料を圧縮し小型化する技術。燃料の設置場所を小さく事が出来るが扱いに注意しないと大変危険であり、又変換機が無いとそのままでは使えず、コストも高い。主に大きさに制限のある小型機械に使用される。
  -Geka Fuel Cell
   -ゲカ燃料電池。電気特性の高いゲカの膨大なエネルギーを電気に変える為の技術。ゲカはそのまま使用するには大変危険である為、微量のゲカと伝導体を含んだ結合剤等を化学的に結合させて燃料を生成する。専用の装置を使う事により電力を取り出す事が可能になる。ゲカは危険である為設備をしっかり整えるか燃料内のゲカ配合量を少なくする事で安全性を確保する事ができる。ゲカの代用としてヒカを使用した方が安全で高い電力を期待できるが、ヒカは量が少なく高コストである為実用的ではない。

 -engine(原動機)
  -Turbo Ion Engine
   -ターボイオンエンジン。イオン流量を増やし推力を大幅に上げた新型イオンエンジン。高コストであり大型化が難しい事から構造上小型機械に向いている。
  -Neo Ion Engine
   -ネオイオンエンジン。ターボイオンエンジンのイオン放射機の応答速度を上げたイオンエンジン。ターボに比べ最大推力は劣るが推力操作の応答が速い。その性能故にフレームや制御システムへの負担も大きい。

 -weapon(武器)
  -Hika, Geka Ammo
   -ヒカ、ゲカ弾薬。ヒカやゲカを使用した弾薬。種類は様々で、徹甲弾、焼夷弾、榴弾等があり、又火薬にもヒカやゲカが使用されているものもある。どれも絶大な効果を期待できるがそれに耐える武器が少ない、製造が難しい、性能がまばら、用意できる個数も少なく費用も掛かる為量産には向かない。

 -automobile(車両)
  -Multi-Legged Vehicle(MLV)
   -多脚車両。装備された脚により、従来の車両が決して通れないような地形を歩行する事ができる。脚を接地安定用のアウトリガーとしての利用も可。タイヤや無限軌道を備えた車種は従来の車両の様に走行する事もできる。脚を使用しない時は折り畳む車種もある。多脚システムは重くて嵩張り、通常車両より機動力は劣る。脚の数は基本4本だが、3本等の種類もある。

*多脚装甲車起立シークエンス。上が起立、下が脚を折り畳んだ状態。

 -Active Machine(AM)
  -アクティブマシン。ロボット工学や人工知能等の最先端技術を多く用いた能動的機械。
  -Active Arms(AA)
   -アクティブアームズ。武装したアクティブマシン。

 -Powered Suit(PS)
  -パワードスーツ。人が着る事で人間本来の能力を拡張する強化服。サイボーグ化していなくてもそれに近い能力を得る事ができるが身体的負担を強いられる可能性がある。
  -Artificial Muscle Suit(Muscle Suit)
   -マッスルスーツ。人工筋肉で覆われた最も需要の高いパワードスーツ。出力は勿論、機動力が高く防御力も申し分ない。コストは高めだが性能故に広く使用されている。
   -防御力:<4.6mm。ピストル弾等は防げるが、小口径高速弾は防げない。
  -Gel Suit
   -ゲルスーツ。ゲル状の性質を持ち、耐衝撃性能の高いパワードスーツ。装着者の衝撃を和らげる事に特化している為、パイロットスーツとして使用される事が多いが防御力は低い。
   -防御力:無いに等しい。

 -Powered Armor(PA)
  -パワードアーマー。主にパワードスーツ着用を前提に搭乗する人型強化装甲。マスタースレイブ等のマンマシンインターフェースを備え、人体の骨格に連動する構造をしている。使用が絶対では無いがパワードスーツを用いる事でパイロットに伝わる外部からの衝撃を緩和しパワードアーマーとの一体化を促進する。制御系を調整する事で障害者や小型人間でも問題なく使用できる。サイボーグ、制工人体使用者も搭乗する事は可能だが制御の負担が増える為効率はあまり良くはない。
パワードアーマーは装甲が厚くなると稼動範囲が狭くなり重量も増えるが、稼動範囲を優先すると関節部のコストが膨らんでいく。理由は関節の一部で使われる蛇腹式装甲が高コストな為である。狭い稼動範囲を補う為に補助腕等を備える事がある。パワードアーマーの多くは太い脚部が干渉してしまう為足を完全に閉じる事はできない。因って歩行する際はがに股になる瞬間があり、一部のパイロットはがに股になるケースがある。こういった事情もあり、パワードアーマーのパイロットの体は以前より柔らかくなる事が多い。パイロットに要する体格はパワードアーマーによってまちまちだが、多く流通しているフリーサイズ型はパイロットの体格に合わせて関節が移動し身長180~140cmに対応している。又使用者の体の一部が欠損している場合、その部位に空洞が生まれる為、その部位の稼動範囲の制限は無くなる。本体の一部分が露出、下半身だけのモデル等パワードアーマーの種類は様々である。
パイロットの操縦技術、反応速度、身体能力、体格や体の柔軟性を数値化した適正値を調べ、パワードアーマーに設定する事で効率良くパワードアーマーを操縦する事ができる。

  -100kg Class Ultra Light Powered Armor(ULPA)
   -100kg(~199kg:総重量)級極軽量機。パワードアーマーの中でも最軽量の為露出がありフレームのみで形成されていて搭乗者の防御性能は極めて低い。軍用では潜入、落下傘部隊等で使用されている。
   -防御力:<12.7mm(frame)
  -200kg Class Very Light Powered Armor(VLPA)
   -200kg級超軽量機。全体的に細く100kg級とは違い全体が防護されており重量が軽い為飛行装置の実用性が高い。軍用では航空支援や制圧任務等に使用されている。
   -防御力:<12.7mm(frame),<7.62mm
  -300kg Class Light Powered Armor(LPA)
   -300kg級軽量機。外見は400kg級より若干小柄でスカートや肩アーマー等の追加装甲が無い。
   -防御力:<12.7mm
  -400kg Class Standard Weight Powered Armor(SWPA)
   -400kg級標準重量機。スカートや肩アーマー等の追加装甲を持ちジェネレーター出力も申し分無くバランスが取れた万能クラス。
   -防御力:<20mm
  -500kg Class Heavy Powered Armor(HPA)
   -500kg級重量機。全体的に太くジェネレーターも大型で400kg級より下半身が大型化されたクラス。
   -防御力:<20mm
  -600kg Class Very Heavy Armor(VHPA)
   -600kg級超重量機。500kg級より上半身も大型化されたクラス。防御力、ジェネレーター出力や有効積載量が高く機動力もある為軍用では主力として用いられる事が多い。
   -防御力:<30mm
  -700kg Class Ultra Heavy Powered Armor(UHPA)
   -700kg級極重量機。肩パーツが頭を覆っている。機体が大きくバランスの確保の為補助脚を備える事が多い。動きが鈍いがその分防御力、ジェネレーター出力や有効積載量が最高レベルに達する。
   -防御力:<30mm

*左上から人間(180cm、マッスルスーツ着用)、100kg級~。左下から400kg級~。最も濃い色が蛇腹式装甲。最も薄い色が共通部品。

*フリーサイズのパワードアーマーは搭乗者の体格に合わせて関節を移動する。(左右のパワードアーマーは同機種である。マッスルスーツを着た左の搭乗者は180cm。右は140cm。)

*ハッチ開閉シークエンス。(内部にマッスルスーツを着用した搭乗者)

*補助腕展開シークエンス。

  -Additional Unit
   -追加装置。パワードアーマーに機能を追加する為に用いられる。規格が合えばパワードアーマー以外でも使用可能。
   -Roller Unit
    -車輪装置。主に脚部に取り付けられ、使用する事で地上での行動範囲が広がる。駆動系の有無や車輪の数等種類は様々。

*フォークリフト装置装備型300kg級軽量パワードアーマー。

 -sensor(感知装置、センサー)
  -Outer Sensor(Hika、Geka)
   -アウターセンサー。周囲のアウターの力(ヒカ、ゲカ)を感知する装置。装置の素子にもヒカやゲカが使われ、一般には両方セットされている。アウターの力は他のアウターの力を引き寄せ合うか反発し合うので、その力を電気信号に変換する事で周囲のアウターの力の状態を知る事が出来る。
   -ヒカがある場合:ヒカ素子が正の反応を示し、ゲカは負を示す(ゲカがある場合は逆)
   -距離が近い場合:信号の更新速度が上がる。
   -量が多い場合:波形の振幅が上がる。
   -濃度が高い場合:周波数が上がる。
   -不安定な場合:波形が変化していく。

  -Active Discrimination Assault Security
   -自動識別強襲警備。自動で脅威の有無を識別し、危険と見なされるものを強襲、無力化する警備システム。測定範囲内の脅威となりえるもの全てを追跡し、危険かどうか、攻撃対象にするかを判別する。攻撃命令を人間が行うものと優秀なコンピュータに任せるタイプがある。攻撃方法を共焦点レーザーにする事で、人込みであっても他人を傷つける事なく目標を攻撃できる。武装が許された近代都市に広く取り付けられている。

  -Fire Line Analysis
   -射線解析。様々な火器の射線を解析する技術。解析方法は画像、熱源、3次元レーダー等を用いる。射線を解析する事に因って火器を持つ本体の目標や行動パターン、未来予測まで知る事が可能になる。主に防犯や戦闘で使用される。

 -Cybernetic Organism(Cyborg)
  -制御型人工有機体(制工体)。制御工学や電子工学等の最先端技術を用いて人工的に製造した有機体組織。
  -Cybernetic Human(Cyman)
   -制御型人工人体(制工人体)。サイボーグ技術を用いて製造された人体。拒絶反応等の問題がなければ人間の身体機能の一部、又は全てを取り換える事が出来る。治療、又は身体機能拡張の為に用いられる。人間にとって害のある環境でも問題なく、体中を自由に改造できる等メリットがある反面、拒絶反応、電子攻撃や部品の磨耗等人間とは違ったリスクに注意しなければならない。
  -Cybernetic Brain(Cybrain,Cyber Brain)
   -制御型人工頭脳(制工脳)。サイボーグ技術を用いて製造された頭脳。電脳ともいう。人体の頭脳を制工脳に取り換える際、本人の脳幹はそのまま残る。制工脳は電子的に構成されており、コンピューターと同じ様に通信網へのアクセスや情報の入出力を行う事が出来る。しかしその分記録領域を定期的に検査しないと機械的不具合や悪性ソフト等による欠陥を招く恐れがある。治療、又は身体機能拡張の為に用いられる。
   -External Simplified Cybernetic Brain(External Cybrain)
    -外付け簡略式制御型人工頭脳(外付け制工脳)。サイボーグ技術を用いて製造された外付け情報処理端末。制工脳とは違い脳を取り替えるのではなく、生きた脳、又は制工脳の処理能力向上の為追加の情報処理端末を後付けする技術。生きた脳はそのままに、脳又は制工脳と外付け端末を繋ぐ中継器を体に移植し異常がなければ使用可能となる。接触、あるいは非接触で外付け端末と通信し、脳からの信号だけで端末を操作できるので応答が早く、手や音声認識等の操作を必要としない。脳本体に対する影響や負担が小さい為電子攻撃の影響を受けにくく、それを逆手に外付け制工脳を脳や制工脳の身代わりとして活用する事もできる。取替えも楽で利便性は高いが処理能力は制工脳に劣る。身体、政治、宗教、金銭面等様々な理由から制工脳手術を受けられない者でも手軽に外付け制工脳手術を受ける事ができる為、人気が高い。多くの利用者は端末の中継器の端子を耳に移植している。端子が耳にある事で端末が内蔵されたヘッドホン、眼鏡、ピアス等を使う事ができ、ファッション性を考慮できる。

 -Cybernetic Space(Cyber-Space)
  -サイバースペース。電脳空間、仮想空間とも呼ばれる。コンピュータネットワーク上にある膨大な情報により構築され、人の意識を自由に行き来させる事ができる仮想的空間。