-最終話-
モコ率いる賞金稼ぎの三人と警察の活躍により、ユウとジュウの殺害を狙った傭兵部隊シノソの計画は阻止された。警察は捜査を続け、病院内部の情報を不正に入手していた職員を逮捕した。残りの傭兵部隊とその傭兵部隊に依頼した製薬会社は、所属不明のパワードアーマーによって壊滅に追い込まれた。
こうしてユウとジュウの命を狙う者はいなくなり、病院は二人の治療に専念する事ができた。
-最終話~ユウとジュウの歌~
イヨ先生はユウとジュウに臨床試験を行い、試験は無事成功した。回復の兆しが見えた二人はより本格的な治療を受ける事となった。頻繁に襲ってくる痛みに耐え、二人はいくつもの治療を重ねる。ユウとジュウはみるみる回復していき、ついには退院できる程元気になっていた。初めてヒカ硬化症の治療に成功したイヨ先生は注目され、その後医学界で評価された。まだ後遺症が残っているため、ユウとジュウは定期的に治療を受けた。二人はリハビリも兼ねて、久々に音楽に励んだ。再び音楽に触れる事ができる喜びに、二人は感動した。
ユウとジュウの治療が始まって数ヵ月後、バンド練習を十分に積み重ねてきた二人は、ついに公の場でカインド・ソフト・ソングとしての活動を再開する事になった。復帰後初のライブは、他のインディーズバンドも複数参加する合同屋外ライブである。そのため入場者数は多く、二人が今まで経験した事がない規模のライブだ。二人を心配し、この日を待ちわびたファンは大いに喜んだ。そして迎えたライブ当日、会場は期待に胸膨らませる客で溢れていた。ライブ開始時刻が近付き、日が沈む中、一組目のバンドがステージに飛び出してきた。観客は騒ぎ出し、一曲目の歌が始まった。歌が会場に響き、バンドと観客が一体となって音楽を楽しんでいた。その光景を目の当たりにし、ユウとジュウは圧倒されていた。
「ユウさん緊張してる?」
ステージ裏から会場を覗くユウにジュウがそっと囁き、ユウは会場を見つめたまま言う。
「うん、だから私の手を握っていてほしいな・・・」
ジュウはユウの手をそっと握り、ユウはその手を握り返した。ジュウはユウの方を向く。
「モコさん達も聞いてくれるかな、僕達の歌・・・」
「きっと聞いてくれるよ・・・褒めてくれたしね、いい曲だって。」
「確かに、それは間違いないね。」
二人は互いの顔を見て笑い合った。
カインド・ソフト・ソングの出番が近付き、スタッフがユウとジュウをステージ横に呼ぶ。二人は暗いステージ横に着くと見つめ合い、そしてそっと抱き合った。それを見ていたスタッフ達は顔を真っ赤にして思わず見蕩れてしまう。
「色々あったね・・・」
ユウが囁き、ジュウも返す。
「うん、色々あった・・・」
「みんなのおかげで、ジュウ君のおかげでここまで来られた。」
「今度はみんなに感謝を伝えよう。僕も、ユウさんに精一杯のありがとうを伝えるよ。」
「私もだよ。」
ステージでカインド・ソフト・ソングの名前が呼ばれ、ユウとジュウはステージに駆け出した。二人を知っている観客は一気に盛り上がり、歓声が響いた。ユウとジュウは歌い始め、それを聞いたファンは感動で涙を流した。二人を知らない観客も二人の演奏を楽しんでいた。そして一曲目が終わり、ユウが観客に向かって挨拶を始める。
「皆さんこんばんは~・・・カインド・ソフト・ソングです・・・しばらく活動を休んでいましたが、こうやって再び皆様の前で歌えるようになりました~。私達を支えてくれた皆様のおかげです・・・なので今夜は、そんな皆様に、そして恩人に、この歌を送ります。二人で作った出来立てほやほやの歌です。聴いて下さい。『愛をいつまでも止めないで』」
ユウが話し終わると、ステージが静かになった。ユウとジュウは互いを見て息を合わせ、アカペラで歌い始めた。二人の澄んだ歌声は、多くの観客の心を掴んだ。アカペラが終わると、伴奏が始まり、ユウとジュウはギターを弾きながら歌いだした。
会場が盛り上がっていると、観客席の後ろにイヨ先生と三人の男女が立っていた。
「いいのか?こんなに離れていたらあまり二人が見えないぞ?」
イヨ先生がそう言うと、腕に包帯を巻いた女性がステージに背を向ける。
「傷に響くからいいんだよ、ここで。どうせこれからはいつでも会えるしな・・・」
女性がそっと振り返ると、ユウと目が合った。遠くからでも、ユウはその女性に気付いた。ユウはジュウに目で訴え掛けると、ジュウもその女性と彼女の仲間達に気付く。観客席の後ろに立つ四人を見て、ユウとジュウの顔は笑顔で溢れた。高鳴る喜びを胸に、ユウとジュウは歌のサビを熱唱する。
「いい歌だな。」
女性が微笑み、彼女の連れ三人、そしてユウとジュウも、皆笑顔が絶えなかった。
-最終話~ユウとジュウの歌~ ~完~
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